プリンタのインクって高い?

今朝、駅の駐車場でとくダネを見ていたら、オープニングトークでキャノンが知的財産高裁に、プリンタ用インクカートリッジのリサイクル品は特許権の侵害だと訴えたなんてニュースをやっていました。


そもそもこの事件は、リサイクルアシストという会社が使用済みのインクジェットプリンタのインクカートリッジを回収し、そこに新たにインクを詰め直して販売していたところ
キャノンが、インクカートリッジの特許権を持っているんだから、これにインクを詰めて勝手に売るのは、キャノンの技術をそのまま使って生産している、だから特許権の侵害だと訴えたというものでした。


で、裁判所が他の判決から基準を持ってきて判断したのが
「生産」か「修理」か
ということでした。


つまり、修理を認めないと中古屋さんとかで売っている修理上がり品も特許料を払わないといけなくなってしまう。
これは流石にまずい。
しかし、他人の技術を使って新しい物を「作って」いるのであれば、それは技術のただ乗りなんだから許されない。というわけです。


過去、「写ルンです」で、同様の争いが起きたことがありました。
このときは、フィルムを取り出す際にカバーの一部を壊さなければならない→性能の低下が起こる
中身を使い切った時点で、製品がユーザーの手元に残らない
の2点が、買ったユーザーの手から完全に離れた物であることを示し
中古だとか修理上がりとして売られることはあり得ないんだから、それを使えるようにして売るのは「生産」であると言っています。


対してインクカートリッジは、使い切ってもカートリッジ自体は綺麗な状態。
更に、使い切ってもユーザーの手元に残る。
よって、ユーザーの手元に残るし、カートリッジも性能は低下していない
だからこれをインクを入れて売っても「生産」にはならない。と言いました。
まぁ、確かにガスの抜けたエアコンを引き取って、それにガスを入れ直して売るのは「生産」ではないですから、この理屈はわからんでもないです。


一般消費者からすれば、これは資源の節約にもなるし、何よりインクカートリッジが安く手に入る喜ばしいこと、かもしれません。
しかし、メーカー側からすればこんなに不条理なことはないでしょう。
インクジェットプリンタは、数色のインクを混ぜ合わせることで数千万の色を作っています。
これは、計算された微妙なインクの混ぜ合わせによって実現されている機能です。
カートリッジに入っているインクの色がほんのちょっと違うだけでもその機能は実現されません。
更に、インクジェットプリンタは1000万分の1リットル程度の微量なインクを飛ばします。
これは、音波で振動させたり、泡を作ったりということで実現しているのですが、これはインクの質量や粘度なんかが予定通りじゃないと、想定している量のインクを飛ばせません。
かといって、カートリッジに入っているインクはそれ単体では販売されていないのでリサイクルメーカーは手に入れることはまず不可能でしょう。
そう考えると、性能の低下・・・してますよね?
下手をすると量の多いインクが出てしまうと、プリンタのノズルが詰まって故障するリスクすらあります。
更に、現在ではほとんどの家電量販店に各メーカーが設置する「リサイクルボックス」があります。
ここに使用済みのカートリッジを投函するとか、リサイクル用なんて書かれている箱に入れる時点でユーザーの手元には残らなくなるのではないでしょうか?


そもそも自分はこの2つの基準すら納得がいかないのですがこれに則ったとしても、キャノンの敗訴はおかしい気がします。
しかし、特許の侵害は「生産」か「修理」かが問題なのでしょうか?
自動車や家電は、その部分部分が市販されているというケースも多く、メーカーとしてもそこでカスタマイズされたり、自前で修理されることは予想しています。
しかし、インクカートリッジのように、そのようなことを予期していない挙げ句、機能低下や本体の故障をほぼ間違いなく引き起こす(後者は希でしょうけど)ものを認めてしまうのはおかしいと思います。
根本的に基準を見直した方が良いんじゃないかなぁ